気象庁データ連動 暑さ指数モニター アプリの特徴と
気象データからのWBGT推算について
アプリ公開に向けてGoogle Play Consoleで準備中
◆信頼性の高いアメダスのオンライン気象データと独自アルゴリズムによって,全国で約840か所の屋外・日陰・屋内の暑さ指数(WBGT)を,リアルタイムで表示します。他の気象データサイトで要求されるような,面倒なAPIキーの登録等は必要なくなりました。本アプリがあなたを暑さから守ります。
1.はじめに
◆熱中症対策を、もっと身近に、もっと正確に: 2025年6月の改正労働安全衛生規則の施行により、職場での熱中症対策が義務化されました。「アメダス暑さ指数モニター Amedas WBGT Simple」は、高価な計測器を持たなくても、スマホ一つで,正確なアメダスのオンライン気象データと独自アルゴリズムによって,暑さ指数(WBGT)管理を可能にします。
【本アプリの6つの大きな特徴】
(1)専用機器不要: 嵩張る黒球付き計測器を持ち運ぶ必要はありません。
(2)国内約840か所に対応: 信頼性の高いアメダスのオンライン気象データから暑さ指数(WBGT)を推算します。
(3)簡単操作:面倒なAPIキーの登録等は必要なくなりました。
(4)独自の暑さ指数推算アルゴリズム: 全天日射量推算アルゴリズム(Watanabe-Geminiモデル2)の新規開発を行っています。
(5)日陰の暑さ指数推算:日射下と日陰の日射量の分離ロジックによって,新たに日陰WBGTの推算を可能にしました。
(6)暑さ指数計算機:温室等の局所的な空間において,温度・湿度の入力と日射量推算から暑さ指数を推算できる機能を追加しました。
2.システム要件
・OS: Android 8.0以上
3.暑さ指数の推算
気象庁が提供されておりますアメダスの気象データは,我が国の気象データに限れば,最も信頼できるものでありますが,その気象データから屋外暑さ指数を推算しようとした場合には,いくつかの課題にぶつかります。
暑さ指数(WBGT, Wet Bulb Globe Temperature, 湿球黒球温度)の計算には,以下に示しますように,湿球温度Tw,乾球温度(気温)Td,および黒球温度Tgが必要となります。Twは,気温と湿度がわかればStullの式等から計算できます。Tdは気温となります。屋内WBGTの場合には,気温と湿度から推算できるのですが,屋外WBGTの場合には,直射日光等による熱の影響を含んだ黒球温度Tgを知る必要があります。OpenWeather等の海外気象データサービスの場合には,雲量(%)等のデータが提供されており,全天日射量の推算が可能なのですが,アメダスの気象データの場合には,日照時間(前1h,前10分)という形でしか気象データの提供がなく,そのデータのままですと屋外暑さ指数の推算が難しいという課題がありました。
4.アメダスから得られる気象データは?
気象庁が提供されておりますアメダスの気象データのフォーマットの例を,ある時刻のデータから一部抜粋した形で以下に示します。
"34392":{"pressure":[1008.1,0],
"normalPressure":[1013.1,0],
"temp":[24.8,0],
"humidity":[74,0],
"visibility":[20000.0,0],
"sun10m":[6,0],
"sun1h":[0.3,0],
"precipitation10m":[0.0,0],
"precipitation1h":[0.0,0],
"precipitation3h":[0.0,0],
"precipitation24h":[0.0,0],
"windDirection":[7,0],
"wind":[5.6,0]},
上記データから,気温24.8℃,総体湿度74%,風速5.6m/sと読み取れるのですが,
日射に関しては,
"sun10m":[6,0],
"sun1h":[0.3,0],
の表記となっています。アメダスのデータ項目名「sun10m」は、直近の10分間における日照時間(単位:分)を表しています。"sun10m":[6,0],から,直近の10分間に6分間日射があったことがわかります。このとき,気象庁の定義では、日照時間としてカウントする(=日射があるとみなす)直達日射量の閾値は0.12 kW/㎡(120 W/㎡)以上とされています。
アメダスの気象データには,直達日射量(kW/㎡)の情報がありませんので,これでは屋外暑さ指数の推算に必要なTgを算出することができません。
5.日射量の推算法は?
日射量の推算に関しては,環境省のサイトでは以下のように説明されていますが,詳細に関しては開示されていません。
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●全天日射量の観測がない地点については、過去の観測値(その地点で観測値がない場合は近傍の地方気象台等における値、約60地点)から、前10分間の日照時間(分)と、晴天時日射量と全天日射量の関係を用いて推定します。
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_detail.php
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これに対しまして,私たちは独自の全天日射量推算アルゴリズム(Watanabe-Geminiモデル2)を開発し,全天日射量の推算を計算し,屋外WBGTの推算を行っています。そのアルゴリズムの詳細は,『推算モデル』で示していますが,概要は以下になっております。
(1) オングストローム・ページ式の適用
(2) Glover & McCullochモデルによる経験係数の緯度依存性の考慮
(3) 太陽位置と天文パラメータの計算(日時依存性)
(4) 10分間大気圏外日射量(I0)の計算
(5) 10分間におけるオングストローム・ページ推算式
(6) アメダス10分日照時間から全天日射量(kW/m2)への換算と適用
(7) 快晴時における快晴時における「日射下(直射日光が当たる場所)」と「日陰(建物などで直達光が遮られた場所)」の日射量の分離ロジック
(8) 天候別の係数と日射特性のメカニズム(Erbs分離モデル)
上記のアルゴリズムでは,日射下(直射日光が当たる場所)」と「日陰(建物などで直達光が遮られた場所)」の日射量の分離を行っています。具体的には,
全天日射量 I = 直達日射量 Id + 散乱日射量 Is
・日射下の全天日射量 = Id + Is (通常の全天日射量)
・完全な日陰の日射量 = Is (空全体から届く青空の光や雲からの散乱光のみ)
散乱比(全天日射量に対する散乱日射量の割合 Kd = Is / I)
を考えています。
6.なぜ天候を自分で設定するのか?
上記の日射量推算は,快晴時に限ってしまえばシンプルになるのですが,アメダスの気象データの「直近の10分間における日照時間,日照時間としてカウントする(=日射があるとみなす)直達日射量の閾値は0.12 kW/㎡(120 W/㎡)以上」とだけされていますので,天候の日射量への影響を知る必要があります。アメダスの気象データにおいても,"weather":[1,0],"というフォーマットで天候の情報は得られるのですが,コード値0:晴れ,コード値1:曇,コード値3:煙霧・・・というように,ほぼ,晴れと曇りの二値でしか天候を知ることができません。しかも,アメダスの天気コードは1時間ごとしか更新されません。直近の10分間における日照時間を用いた推算に対して,かなりの時間的なずれが生じてしまいます。天候を知る方法としては,気象庁の天気予報JSONもありますが,データは3時間ごとや6時間ごと,あるいは「今日一日の天気」という単位でしか更新されません。
上記の課題がありますことから,本アプリでは,天候による散乱比(全天日射量に対する散乱日射量の割合 Kd = Is / I)の変化を,以下のように区分けした天候のマニュアル選択によって,直近の10分間における日照時間から推算する日射量に反映させています。
天候の判断には、大気外日射量(理論上の最大値)に対する実際の全天日射量の割合である「晴天度(Kt = I / I0)」を用います。
【天候別の挙動一覧】
1. 快晴 (日照時間 10.0分 / Kt ≧ 0.8)
・散乱比 Kd = 0.165 (固定)
・直達光が8割以上。日射下は極めて暑く、日陰に入ると劇的に日射量が減ります。
◆雲がほぼなく,影がクッキリと濃く出る状態。
2. 晴れ時々曇り (日照時間 3.0~8.0分 / Kt 0.3~0.7)
・Kt に応じて動的補正 (Kd は 0.3~0.7 程度)
・雲で直達光が部分的に遮られますが、日陰でも空からの散乱光がそこそこ強い状態です。
◆青空は見えているが,時々雲で太陽が遮られる状態。
3. 薄曇り (日照時間 0.1~2.0分 / Kt 0.2~0.3)
・Kt に応じて動的補正 (Kd は 0.8~0.9 程度)
・日照はわずかにありますが、光の多くが雲に散乱されており、日陰と日射下の差が少なくなります。
◆空全体に薄い雲がかかり、太陽の位置はわかるが,影がうっすらとしかできない状態。
4. 曇天・雨天 (日照時間 0.0分 /Kt 0.2 未満)
・散乱比 Kd = 1.0 (固定)(全天 = 散乱)
・直達光はゼロ。日射下と日陰の日射量が完全に一致します。
◆空一面が暗い雲で覆われ、影がまったくできない状態。
7.なぜ日陰WBGTがわかるのか?
私たちの全天日射量推算アルゴリズム(Watanabe-Geminiモデル2)では,日射下(直射日光が当たる場所)」と「日陰(建物などで直達光が遮られた場所)」の日射量の分離を行っています。
全天日射量 I = 直達日射量 Id + 散乱日射量 Is
・日射下の全天日射量 = Id + Is (通常の全天日射量)
・完全な日陰の日射量 = Is (空全体から届く青空の光や雲からの散乱光のみ)
散乱比(全天日射量に対する散乱日射量の割合 Kd = Is / I)
これによって,建物などで直達光が遮られた場所にも届いている散乱日射量 Isから,日陰の暑さ指数WBGTの推算という新たな機能を可能にしています。
8.なぜ暑さ指数計算機は必要なのか?
アメダスのデータは広域な気象データであるため,それら気象データから推算される暑さ指数WBGTは,作業現場のローカルな暑さ指数とは異なる場合もあります。例えば,温室で作業する場合などは,気象データに近い日射は受けているものの,気温や湿度は植物の生育環境に合わせて調整されていると考えらます。このようなとき,温湿度計が設置されているならば,その温度及び湿度の値を読み取って,それらの値を手入力して暑さ指数WBGTを計算できる機能を有した『暑さ指数計算機』を用意しました。このような暑さ指数計算機は,室内の空調温度の制御においても有効と考えられます。
9.気象データの取得および暑さ指数の推算について
本ソフトウェアで表示される暑さ指数や日射量は,気象庁アメダスが提供する気象データを利用し,新たに開発した独自の推算アルゴリズム(Watanabe-Geminiモデル1, Watanabe-Geminiモデル2)によって推算しています。
10.情 報
アプリinfoぺージに移動しますと,以下の各サイトへのリンクが表示されます。
・アメダス暑さ指数モニターアプリ Amedas WBGT Simpleの特徴
・暑さ指数WBGT推算モデル(Watanabe-Geminiモデル1)
・日射量推算モデル(Watanabe-Geminiモデル2)
【免責事項】
本アプリのWBGT値はアメダスの気象データを用いた半物理モデルに基づく推定値です。
実際の現場の状況を優先し、熱中症予防の参考値としてご利用ください。
医療・安全判断の最終決定は専門の機器で行ってください。
本アプリの使用による損害について開発者は責任を負いません。
【謝 辞】
本プロジェクトでは、GoogleのAIモデル「Gemini」を共同開発パートナーとして迎え,
暑さ指数WBGTの推算モデル(Watanabe-Geminiモデル2)およびアプリの開発を行いました。
オブジェクト指向設計のアドバイスや気象データを用いた暑さ指数の推算ロジックの構築において、
多大な技術協力を得たことをここに感謝いたします。