UHF帯RFIDタグ光センサー,植物用UFH隊RFIDセンサー
近年,RFID技術の医療・介護分野への応用が検討されており、RFIDタグの濡れによる特性変化を、排尿検知センサーとして用いたおむつ等が開発されています。電池や外部電源を必要としないウェアラブルなパッシブ型RFIDタグセンサーは,低装着負荷のデバイスとして,医療・介護分野で今後の普及が期待されています。排尿検知のみならず,尿や排出物中の混入成分の検査をパッシブ型RFIDタグセンサーで行うことができれば,医療・介護現場での負荷低減につながると考えられます。例えば、尿中の血尿や潜血等の成分変化を,透過率変化から検知することを考えた場合に必要となるのは,光源としてのパッシブ型LEDタグおよび受光素子としてのパッシブ型RFIDタグ光センサーです。パッシブ型LEDタグは既に実現されていますので,パッシブ型RFIDタグ光センサーの開発が課題となります。
私たちは,入射した光の放射照度を定量的に測定できる機能を有した,パッシブ型UHF帯RFIDタグ光センサーの研究開発を行っています(特願2022-132488)。その一例をFig.1に示しました。RFIDタグ用ICチップとしては,周囲環境による内部インピーダンスのオートチューニング量の変化をセンサーコードSとして出力できるMagnus®-S3を使っています。RFIDタグの基本構造であるICを配置した開口を有するインピーダンス整合部およびアンテナ部に加えて,光検出器を配置した第2開口部を,インピーダンス整合部に設けた構造となっています。第2開口部のインピーダンスは,それに電気的に接続している光検出器(フォトトランジスタ,フォトレジスタ等)によって変化しますので,この変化をMagnus®-S3 ICからのセンサーコードSとして検知することで,放射照度とセンサーコードSとの関係を求めることができます(Fig.2)。この時,リーダーRSSIも変化しますが,RSSIの値はRFIDタグとリーダーとの位置関係の依存性が顕著であり,定量的な変化の検知に用いることは難しくなります。これに対して,Magnus®-S3からのセンサーコードSは,ICの周囲の環境によって決まるので,定量的な取り扱いが可能です。
Fig.1 UHF帯RFIDタグ光センサー.
Fig.2 RFIDタグ光センサーにおけるセンサーコードSおよびリーダーRSSIと放射照度との関係.
閉鎖空間型の植物工場内の植物栽培においては,植物栽培ハウス内の温度,湿度などの状態を,ほぼ均一に管理することが可能であり,その場合には,環境温度や環境湿度等の情報に基づいた物栽培ハウス内の雰囲気の管理によって,植物の生育に好適な環境の制御が可能です。これに対して,開放空間型の植物工場の場合には,温度、湿度などの状態は均一ではなく,また,開放空間で計測した環境温度や環境湿度等の情報が,植物自体の状態を反映していない場合があります。植物工場ばかりではなく,開放空間で自然環境に晒されている植物の状態を検知するためには,植物自体の温度や乾湿状態に係るパラメータを計測することが必要となります。
私たちは,植物に装着するのに特化した植物用UHF帯RFIDタグセンサーの研究開発を行っています(特願2022-177901)。その一例をFig.3に示しました。RFIDタグ用ICチップとしては,周囲環境による内部インピーダンスのオートチューニング量の変化をセンサーコードSとして出力できるMagnus®-S3を使っています。FRIDタグセンサーのアンテナ部は,ポリウレタンフィルム(厚さ5μm)を介して接続されている複数の放射導体小片から成り、ポリウレタンフィルムの伸縮によって、RFIDタグセンサーを貼り付けた植物体が可動できる構造となっています。
Fig.4は,植物に装着したRFIDタグセンサーによる光屈性のリアルタイムセンシングのイメージです。ICチップMagnus®-S3によって,植物自体の温度をセンシングでき,センサーコードSの変化によって植物の乾湿状態を知ることができます。また,植物の光屈性や伸長成長に伴って,RFIDタグセンサーのアンテナ部の伸縮が起こり,それに伴うセンサーコードSやオンチップRSSI(Received Signal Strength Indicator)の変化から,植物の動的挙動のセンシングを行うことが可能です。
Fig.3 植物用UHF帯RFIDタグセンサー.
Fig.4 植物に装着したRFIDタグセンサーによる光屈性のリアルタイムセンシングのイメージ.
(Ref.) Brett S. Stoddard, Hacking RFID Tags to Produce Economical Soil Moisture Sensors,
https://ir.library.oregonstate.edu/concern/honors_college_theses/4m90f2174
UHF帯RFIDタグの製作には,通常は大掛かりな大量生産装置と多大な経費が必要となり,小ロットでのカスタム品の製造を行うことは困難です。弊社ではレーザープロセッシングにより種々のユニークな特性を有したUHF帯RFIDタグを低コスト・少枚数でカスタム製造・試作ができます(特願 2022-109329)。