Energy harvesting 環境発電&蓄電: 以下は,Webで公開されている情報を頼りに,振動発電系のセットアップを行うための忘備録です。
種々電子素子の入手先,仕様,使い方,特性,実際の計測データ等々,私同様にゼロから振動発電系を組んでみたい方がいらっしゃった場合も考えて,
できるだけわかりやすく記録しておきたいため,出典のURLとともに図表等を直リンク(ダイレクトリンク)させていただくこともあるかもしれません。
直リンク等に問題がある場合には削除いたしますので,御指摘ください。よろしくお願い申し上げます。
振動発電&蓄電用実験系の準備 No.10
[11]THRIVE K7520BP2 振動発電素子 (大) -両面・大電流タイプ-(3)
電流ー電圧,電力ー電圧特性
前ページ(2)では,K7520BP2 振動発電素子を,表裏両側に対称に振動させた場合の開放電圧(負荷をつながない状態での電圧)の測定を行った。1Hzでの振動発電において,変位が±7mmの条件下で,K7520BP2 振動発電素子の仕様定格のVp-p(整流を行っていない条件下での交流波のprak-to-peap電圧)=30Vの発生を確認できた。
今回は,変位が±7mmの条件下で,振動数を1,5,および10Hzでの電流ー電圧,電力ー電圧特性の検討を行った。この時のブリッジダイオードで整流後の開放電圧は,先のNo.9ページの図9-12,図9-13,および図9-14に示されるように,1Hzで15.6V,5Hzで14.5V,および10Hzで10.7Vであった。
振動数1 Hzの場合の電流ー電圧曲線および電力ー電圧曲線を,それぞれ,図10-1および図10-2に,
振動数5 Hzの場合の電流ー電圧曲線および電力ー電圧曲線を,それぞれ,図10-3および図10-4に,
振動数10 Hzの場合の電流ー電圧曲線および電力ー電圧曲線を,それぞれ,図10-5および図10-6に示した。
振動発電での電流値に関しては,抵抗を負荷として挿入してオシロスコープによる電圧降下から算出していたのだが(丸形圧電素子に対する図4-14,図4-15の場合),K7520BP2 振動発電素子の仕様とされている出力電流: 600μAよりもかなり低い測定値となってしまったため,今回は,デジタルメータの電流モードでピークホールド機能を使って電流の最大値を直接求めることで測定を行った。
電流ー電圧曲線においては,振動数が上がるほど,振動発電による電流値が上がっている。電流値は,負荷の抵抗値が小さいほど大きくなり,抵抗がゼロの場合(実験は行っていないが仮想的に)には電圧はゼロとなり,この場合の電流値は閉回路電流となる。K7520BP2 振動発電素子の仕様表にある出力電流がどのような条件下(例えば負荷抵抗)での電流なのか把握できていなかったのだが,たぶん,閉回路電流(負荷がない閉回路のときの電流)なのではないだろうか?
振動数が1,5,および10Hzと上がるにしたがって,最大電流(閉回路電流?)も増加しているので,さらに振動数があがることで,600μA前後の電流が得られると思われる。
しかし,最大電流(閉回路電流?)増加しても,振動発電の最大電力が増加することにはならない。圧電素子の振動発電の電流と電圧をどう考えるのか理解できていなかったのだが,たぶん,太陽電池の光電流ー光起電力のI-Vカーブと同様に考えてもよい?と思われる。
太陽電池の光電流は閉回路で最大となるが,その時には電圧はゼロなので利用できる電力もゼロになる。太陽電池で利用できる最大電力は,電圧(光起電力)に対して電力(電流x電圧)のプロットを行い,その最大値から知ることができる。
そのような観点から,K7520BP2 振動発電素子の特性を見ると,振動数が高くなるほど電流(閉回路電流?)は増加するが,電流の増加が低電圧側にシフトするために,電力(電流x電圧)の値は低下している。振動発電による電力という点からは,10Hz以上の振動数の場合よりも,5Hz以下の振動数のほうが好ましい?ような結果となっている(図10-2,10-4,10-6の比較で)。
振動発電をどのようなデバイスに適用するかにもよると思うが,振動発電モジュール
LTC3588にようなDC-DCコンバーター的なユニットを介さない場合には,5V駆動なら,5Hzでの振動発電が最も好ましということになる?と思われる。
K7520BP2 振動発電素子の振動発電による電力の振動数依存性は,KINEZ 振動発電素子(大)-両面・高電圧タイプK7520BS3に関して,以下の使用説明書の7ページに記載がある。
DATA_KINEZ(TM) 振動発電素子 (sengoku.co.jp)
https://www.sengoku.co.jp/item/pdf/spec_KINEZ_1_20.pdf
使用説明書では,高電流タイプK7520BP2のデータはなく,高電圧タイプK7520BS3のデータになっているが,記載のデータの中では一番振動数の低い21.2Hzで,5V出力電圧のときに最大電力となっていて,0.2 mW弱の値となっている(図がLog表示で読み切れないので)。
今回の実測データでは,10Hzが最大振動数となっているが,図10-6において,2V前後で0.19mWとなっており,傾向としては一致している。
使用説明書の高電圧タイプK7520BS3のデータでは,記載のデータの中では一番振動数の低い21.2Hzで,負荷抵抗が100KΩで電力が最大となっているが,今回の実測の図10-6(10Hz)においては,最大電力となるのは負荷抵抗が51kΩの時であった。これも傾向としては一致している。
図10-4の5 Hz 振動数の場合には,最大電力となるのは100kΩの時であった。
高電流タイプK7520BP2(定格:最大出力電圧: 30Vp-p,出力電流: 600μA)のほうが最大電流が大きいので,より高い電力が得られると思っていたが,もしかしたら,高電圧タイプK7520BS3(定格:最大出力電圧: 80Vp-p,出力電流: 100μA)を5Hz以下の振動数で使ったほうが好ましい(電力が得られる)場合があるのかもしれない。
高電圧タイプK7520BS3についても,後日同様な検討を行うことを予定している。
ともかく,先の丸形圧電素子を押す(あるいは瞬間的にたたく)場合のパルス状の発電電圧に比べて,高電流タイプK7520BP2はフレキシブルで,素子の両面に対称的に変位するときに発電電圧は変位(時間)に比例したきれいな三角波になるので,時間平均としての電流および電力は,先の丸形圧電素子よりも高くなっている。そのため,LEDは非常によく光った。→No.11にまとめる予定。
(先の丸形圧電素子でも振動モードを工夫すればもっと発電電力を上げられると思われる。基板の真鍮に細工しようか)
LEDの発光強度等で,定量的かつパルス発光の時間変化として比較できるように工夫しないと,Youtube動画だけでは議論が難しくなってきた........
圧電素子の研究をしようという訳ではないのだが,研究開発目的している平面型マイクロスーパーキャパシタや多価金属二次電池等の蓄電デバイスと組み合わせる振動発電系の素性が分からないことには話にならないので.........
図10-1 1 Hz 振動数および±7mm変位でのK7520BP2 振動発電素子の電流ー電圧特性
図10-3 5 Hz 振動数および±7mm変位でのK7520BP2 振動発電素子の電流ー電圧特性
図10-5 10 Hz 振動数および±7mm変位でのK7520BP2 振動発電素子の電流ー電圧特性
図10-2 1 Hz 振動数および±7mm変位でのK7520BP2 振動発電素子の電力ー電圧特性
図10-4 5 Hz 振動数および±7mm変位でのK7520BP2 振動発電素子の電力ー電圧特性
図10-4 10Hz 振動数および±7mm変位でのK7520BP2 振動発電素子の電力ー電圧特性
管理人 (水曜日, 24 4月 2024)
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