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非液体電解質,高分子ゲル電解質,IRドロップ,フレキシブル

 

全固体型多価イオン二次電池に向けて

 All-solid state Multivalent metal rechargeable battery

2023.8.16

 マグネシウム二次電池から,他の多価金属二次電池へも視野が広がってきましたことから,このホームページでの”マグネシウム二次電池”の表記を,”多価金属二次電池”にすることとしました。(2023.12.25)

 私たちが検討を行っている二次電池は,多価金属イオンが正極と負極の間を移動するような従来の多価イオン二次電池とは異なり,また,電解質にヨウ素分子を加えておらず,電解質中のヨウ素分子の酸化還元反応を利用した従来の多価金属ヨウ素二次電池とも異なっており,金属負極側の電気化学反応から見れば,多価金属ヨウ素イオン二次電池と呼ぶべき構造の多価金属二次電池になっています。

↓以下は、2023.8.16時点での認識。

 

充電と放電を繰り返して再利用できる二次電池は,現在様々な分野において必須のものとなっており,なかでも,リチウムイオン二次電池が広く用いられています。しかし,リチウムイオン電池の普及に伴い,それに起因する発火・炎上がたびたび問題となっています。また、小型電子機器においては,内部にリチウムイオン電池が組み込まれていることに気づかずに,廃棄処理が行われ,発火が起こってしまうようなことも起こってきております。

 

そのような安全性の問題に加えまして,リチウムイオン二次電池の原料となるリチウムは,資源不足や安定供給の面での課題があり,他の元素からなる電池の開発が求められています。その中で,マグネシウムは,資源量が豊富で,コストが安く,安全性が高いという利点を有しており,これまでは主に,一次電池としての検討が行われてきましたが,最近では,マグネシウム二次電池の実現が期待されています。しかし,マグネシウム二次電池は,液体系電解系,非液体電解質系ともに,研究開発の段階にあり,実用化には至っていないのが現状です。

 

今後は,ウェアラブル型の小型電子機器が今後ますます普及することが予想され,より安全な二次電池の開発と普及が求められています。二次電池の安全性の面からは,液体電解質に代わる,固体電解質やゲル電解質等の非液体電解質からなる二次電池の開発が求められ,マグネシウム二次電池においても、固体電解質やゲル電解質等の非液体電解質が検討されております。しかし,非液体電解質では,液体電解質の場合よりもイオン種の拡散が起こりづらいことや、電解質と電極との間の界面抵抗の増加等の様々な因子によって過電圧が生じ,それによって,放電直後に電圧が降下するIRドロップ(IR損)が顕著となりやすいという問題があります。IRドロップの増加によって、二次電池の放電電圧の低下や、充放電サイクル特性等の,電池性能の劣化が起こるという課題がありました。私たちは、充放電特性おけるIRドロップを低下させることのできる,全固体型マグネシウム二次電池の基本構造に関して,一つの可能性を見いだせております(特願2023-132259)。その結果は,これまでに検討を行ってきたスーパーキャパシタ(電気二重層キャパシタ)の検討から派生してきたもので,非液体電解質型の電気二重層キャパシタの積層構造及び電極材質の検討を繰り返す中で,それは,マグネシウム金属電極を備える二次電池的な構造に変化してきています。

 

マグネシウム二次電池が,リチウムイオン電池を性能で凌駕し置き換えるということは,現時点ではなかなかイメージできない状況ではありますが,安全性という点に関しては現時点でも十分にアドバンテージを有しており,センサーやウェアラブル電子デバイス等のなかのある特定な用途から,次第にリチウムイオン電池を置き換えていって,安全性を担保していくというような戦略は可能かもしれません。その場合には,電池容量といった従来の評価基準以外にも,フレキシブルであったり薄型であったり,屈曲状態での電池の駆動安定性や安全性といった特性が価値になる場合もあり得ると考えています。その意味では,マグネシウム二次電池は,液体電解質型ではなく,非液体電解質型であることでさらに可能性が広がると思います。

 

リチウムイオン電池でそうであったように,マグネシウム二次電池においても,その分野にいかに多くの研究者・技術者が参入してしのぎをけずっていくかが,その実現のための重要な要素になると思います。

私たちも,そのスタートラインに立つことができました。

 

(注)固体電解質およびゲル電解質等の非液体電解質を含めまして,液体電解質系ではない非液体電解質系のマグネシウム二次電池を,全固体型マグネシウム二次電池としています。また,私たちの非液体電解質膜の特性は,No.2のページで述べるように,ゲル膜よりも固体高分子膜に近いものになっています。