Energy harvesting 環境発電&蓄電: 以下は,Webで公開されている情報を頼りに,振動発電系のセットアップを行うための忘備録です。
種々電子素子の入手先,仕様,使い方,特性,実際の計測データ等々,私同様にゼロから振動発電系を組んでみたい方がいらっしゃった場合も考えて,
できるだけわかりやすく記録しておきたいため,出典のURLとともに図表等を直リンク(ダイレクトリンク)させていただくこともあるかもしれません。
直リンク等に問題がある場合には削除いたしますので,御指摘ください。よろしくお願い申し上げます。
振動発電&蓄電用実験系の準備 No.16
[11]THRIVE K7520BP2 振動発電素子 (大) -両面・大電流タイプ-(9)
振動発電モジュール LTC3588との組み合わせによる赤色LED発光特性
前ページでは,大電流タイプのTHRIVE K7520BP2振動発電素子と振動発電モジュール LTC3588とを組み合わせた振動発電系において,
紫色LED(Opto Supply社: OSV5YL5111A,405 nm,順方向電圧3.4V,20mA)の発光特性に関する検討を行った。振動発電モジュール LTC3588と組み合わせると,ブリッジダイオードの時とはまったく様相が異なり,(シングル)パルス状に非常に明るく発光した。ただし,その発光時間は非常に短く,数ミリ秒のオーダーであった。また,0.1~10Hzの各振動数でのLED発光特性においては,何れの振動数でも1 mWを超える発光強度は1 mWを超える発光強度となった。
今回は,低電流でも発光が可能なLED素子(赤色,Optosupply社,OSR5PA3133A-1MA,順方向電圧:1.8V,1mA)を用いて,大電流タイプのTHRIVE K7520BP2振動発電素子と振動発電モジュール LTC3588とを組み合わせた振動発電系における発光特性の振動数依存性の検討を行った。
図16-1に, LTC3588振動発電モジュールによる赤色LED(Optosupply社,625nm,OSR5PA3133A-1MA,順方向電圧:1.8V,1mA)発光実験のセッティングを示した。LTC3588振動発電モジュール の出力電圧の設定は,LEDの順方向電圧に合わせて1.8Vに設定している。赤色LED(Optosupply社,OSR5PA3133A-1MA)の順方向電圧は,標準値1.8V, 最大値2.2Vの仕様となっている。
図16-2 に,大電流タイプのTHRIVE K7520BP2振動発電素子と振動発電モジュール LTC3588とを組み合わせた振動発電系で駆動した
赤色LED(Optosupply社,OSR5PA3133A-1MA,順方向電圧:1.8V,1mA)のパルス状発光の振動数依存性を示した。前ページNo.14の紫色LED(Opto Supply社: OSV5YL5111A,405 nm,順方向電圧3.4V,20mA)の駆動の場合には,LEDの発光強度はシングルパルス状の減衰を示したのに対して,低電流発光型の赤色LED(Optosupply社,OSR5PA3133A-1MA,順方向電圧:1.8V,1mA)の場合には,複数のパルスピークを示すパルス列的な形状の時間プロファイルであった。
さらに特徴的なのは,赤色LED発光パルス列のパルス数が,振動数依存性を示したことであった。図16-3に,LED発光パルス列パルス数の振動数依存性を示した。パルス数は,振動数が5Hz付近で最大値となり,振動数20Hzでは明らかな減少を示した。
赤色LED発光パルス列中の各パルスの半値幅は,振動数が違ってもほぼ同一で,0.48msであった。この半値幅は,前ページNo.15の紫色LEDの発光のパルス半値幅0.5 msとほぼ一致していた。このような短パルスの減衰の時定数は, LEDの特性というよりは,LTC3588振動発電モジュール内のコンデンサーその他の素子の時定数で決まってくるものではないだろうか?
図16-4には,赤色LEDのパルス列状発光の半値幅の振動数依存性を示した。
図16-1 LTC3588振動発電モジュール による赤色LED(Optosupply社,OSR5PA3133A-1MA,
順方向電圧:1.8V,1mA)発光実験のセッティング。
図16-2 大電流タイプのTHRIVE K7520BP2振動発電素子と振動発電モジュール LTC3588とを組み合わせた振動発電系で駆動した
赤色LED(Optosupply社,OSR5PA3133A-1MA,順方向電圧:1.8V,1mA)のパルス列状発光の振動数依存性。Ch1(オレンジ):赤色LEDにかかる電圧の時間変化,Ch2(水色):LEDのパルス列状発光プロファイル(時間軸:2.50ms/div)。
図16-3 大電流タイプのTHRIVE K7520BP2振動発電素子と振動発電モジュール LTC3588とを組み合わせた振動発電系で駆動した
赤色LEDのパルス列状発光のピーク数の振動数依存性。
図16-4 大電流タイプのTHRIVE K7520BP2振動発電素子と振動発電モジュール LTC3588とを組み合わせた振動発電系で駆動した
赤色LEDのパルス列状発光の半値幅の振動数依存性。
図16-5には,赤色LEDの発光強度(放射強度)に測定に用いたフォトダイオードセンサユニット(浜松ホトニクス,C6386-01)の分光感度特性(Range M)を示した。赤色LEDの発光波長は,625nmであるので,2.208 mV/μWとして,図16-2のオシロスコープのパルス列(Ch2 水色)の最大値から,赤色LEDの最大発光強度(mW)を求めて,図16-6に示した。振動数依存性はなく,ほぼ一定値であった。
ブリッジダイオードによる整流のみの場合には,振動数に比例して発光強度が増加したが, LTC3588振動発電モジュールによる場合には,発光強度は振動数によらず一定となった。
この場合,振動数で何が違ったかというと,パルス発光の時間間隔(単位時間当たりのパルス数)であった。振動数1Hzと5Hzの場合の,LEDにかかる電圧(Ch1 オレンジ)とLED発光強度(Ch2 水色,mW換算前の電圧)のオシロスコープトレースを図16-7および図16-8にそれぞれ示した。両図において,LED発光に関わるパルス状のピークの高さがばらついているが,これは発光のパルス幅が短く,広い時間帯域(それぞれ250ms/div/div, 50ms/div)での観測では,オシロスコープの時間軸の分解能の問題で,ピーク値をとらえきれていないことも原因している。単位時間当たりのパルス数は,5Hzのほうが多くなっている。
ところで,LTC3588振動発電モジュール を用いた場合には,ブリッジダイオード整流の場合のように,振動と発光のタイミングとは一致しない。これは,LTC3588による昇圧と出力側コンデンサーの充電等のプロセスを経るためと考えられる。
振動数が10Hzおよび20Hzの場合の,LEDにかかる電圧(Ch1 オレンジ)とLED発光強度(Ch2 水色,mW換算前の電圧)のオシロスコープトレースを図16-9および図16-10にそれぞれ示した。赤色LEDの場合にも,5Hz以上に振動数が増加しても,単位時間当たりのパルス数は増えず,かえってパルス発光の時間間隔が長くなっている(単位時間当たりのパルス列数が減っている)。この現象は,図16-2および図16-3に示した1つの発光パルス列中のパルス数の傾向と一致している。
LTC3588振動発電モジュール の特性によるものと考えられるが,その理由を把握できていない。
実験的には,今回の赤色LEDの発光においても紫色LEDの場合と同様に,LTC3588振動発電モジュール を用いた場合には,5 Hzよりも振動数を高くしても効果がない,という結果だった。
逆に低振動数側の特性は,大幅に改善された。単発の振動発電でみれば,0.1Hzの振動数においてさえ,高振動数側と変わらない発光強度が示された。人間の歩行や動作の振動数は1Hz前後と思われるが,そのような低振動数での振動発電において,LTC3588振動発電モジュールは非常に有効なデバイスであると考えられる。
LTC3588振動発電モジュール のコンデンサー容量を変えることで,異なる挙動となると思われるが,まだ検証できていない。
図16-5 フォトダイオードセンサの分光感度特性(Range M)。
図16-6 赤色LEDの最大発光強度(パルス列のピーク値)の振動数依存性。
図16-7 振動数1Hzの場合のLEDにかかる電圧(Ch1 オレンジ)とLED発光強度(Ch2 水色,mW換算前の電圧)のオシロスコープトレース
図16-8 振動数5Hzの場合のLEDにかかる電圧(Ch1 オレンジ)とLED発光強度(Ch2 水色,mW換算前の電圧)のオシロスコープトレース
図16-9 振動数10Hzの場合のLEDにかかる電圧(Ch1 オレンジ)とLED発光強度(Ch2 水色,mW換算前の電圧)のオシロスコープトレース
図16-10 振動数20Hzの場合のLEDにかかる電圧(Ch1 オレンジ)とLED発光強度(Ch2 水色,mW換算前の電圧)のオシロスコープトレース
(LTC3588 圧電素子・振動発電モジュール )
・ストロベリー・リナックス社
LTC3588 圧電素子・振動発電モジュール メーカー品番:LTC3588-1
https://strawberry-linux.com/catalog/items?code=12018
https://strawberry-linux.com/pub/ltc3588-1.pdf
https://strawberry-linux.com/pub/35881f.pdf
管理人 (水曜日, 24 4月 2024 10:14)
コメント欄を試験的に開設しました。
技術情報交換等にご利用下さい。(2024.4.24)