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全固体型多価金属二次電池に向けて  No.14

亜鉛二次電池

2024.2.7

 

マグネシウム二次電池と

亜鉛二次電池

 マグネシウムは,資源量が豊富で地域的な偏在が少ないことから,元素戦略的な見地から電池用材料として非常に魅力的な物質である。しかし,マグネシウムを負極とした二次電池においては,正極材料,電解質溶液の安定性,不動態皮膜等の電気化学的に不活性な層が電極表面に形成されやすいことで起こるIRドロップ,充放電時に電流密度を上げた時の特性劣化など,今後解決しなければならない様々な課題があることから,現在のところ商業ベースの製品に至っていないと思われる。

Table1 各種金属電極の特性と理論容量


 

これに対して,亜鉛を負極とした二次電池に関しては,以下のリンクに示すような二次電池の研究開発・製品開発が行われ,市場に投入され始めている

 

ニッケル亜鉛電池のサンプル出荷を開始(FDK株式会社

・亜鉛二次電池「ZNB」が高める電力インフラのレジリエンス(日本ガイシ株式会社)

・亜鉛二次電池「ZNB」が蓄電池分野で世界初のUL検証マークを取得(日本ガイシ株式会社)

・寿命が鉛蓄電池の4倍、エナジーウィズがニッケル亜鉛電池を投入へ(エナジーウィズ株式会社)

・カーボン-亜鉛ハイブリッド畜電池(日本触媒株式会社)

・亜鉛2次電池の実用化が間近? 三井金属と同志社大が長寿命を確認

 

上記の亜鉛二次電池のうち,日本触媒株式会社のカーボンー亜鉛ハイブリッド二次電池を除いて,他は,ニッケル亜鉛二次電池型(ニッケル水素電池の負極を亜鉛に置き換えた構造の電池)となっており,当面の用途は鉛蓄電池の代替が想定されているようだ。上記のものはすべて水系電解質となっており,製造コストの面でも利点があるように思われる。

 

しかし,亜鉛二次電池とはいえ,正極にはニッケルが用いられている。ニッケルは,クラーク数も0.007でレアメタルに分類される金属であり,価格も亜鉛の約10倍といったところだろうか。資源的に考えれば,ベースメタルのみからなる二次電池が望まれるところと思われるが,それらが有する課題を考えた場合,上記のような二次電池の用途が当面広がっていくのだろうか。あるいは,リチウムメタル自体を負極とした二次電池や固体電解質リチウムイオン電池がそれらを追い越していくのだろうか。科学技術・工業技術的には非常に興味深い状況になっているように思える。

 

上記の亜鉛二次電池のなかで,ベースメタルのみからなる二次電池としては,2020年2月にプレスリリースされた日本触媒株式会社のカーボンー亜鉛ハイブリッド二次電池があり,負極に亜鉛電極,正極に活性炭電極を用いたハイブリッド型の構造となっている。その構造や特性に関しては,2022年にElectrochemistry誌で報告された以下の論文のものが該当するように思われる。

 

The Development of the Organic/Inorganic Composite Separator for Use in Secondary Zinc Batteries

Satoshi OGAWA  , Yasuyuki TAKAZAWA, Hiroko HARADA, Mitsuzo NOGAMI

Electrochemistry, 90(1), 017001 (2022)

 

上記の論文(オープンアクセス)中の充放電特性(Fig.5および6)を見ると,1V前後の電位での,キャパシター的な三角波状の充放電特性がみられる。

Fig.6には,100サイクルと10000サイクルでの,充放電曲線の比較図があり,

以下のような充放電特性はほとんど変化しておらず,これは,電気二重層キャパシタ的な特性によると思われる。

放電電圧:約1.25V → 約0.4V

充電電圧:約0.55V → 約1.4

 

金属として亜鉛のみの構成で,より二次電池的な特性のものが可能かどうか,

私たちが検討を行っている積層型非液体電解質マグネシウム二次電池(マグネシウムヨウ素イオン二次電池)において,負極をマグネシウムから亜鉛に代えて,亜鉛ヨウ素イオン二次電池の構成として,その特性の検討を行ってみた。

 

積層型非液体電解質構造の

亜鉛ヨウ素イオン二次電池

への適用

Fig.1には,積層型非液体電解質構造を有した亜鉛ヨウ素イオン二次電池の断面図を模式的に示した。その構造には,これまでに私たちが検討を行ってきた二次電池(積層型非液体電解質二次電池:特願2023-132259)の一形態を適用した。Fig.1において,負極10の金属電極を亜鉛(亜鉛フォイル,厚さ0.01mm)とし,正極11にはカーボン電極(グラファイト粉末,カーボンブラック粉末),第一非液体電解質20にはポリビニルアルコール(PVA)にヨウ化カリウム等を分散させたもの,第二非液体電解質21にはPVAに塩化リチウム等を分散させたものを用いた。

Fig.1 積層型非液体電解質構造を有した亜鉛ヨウ素イオン二次電池の模式図。10:負極(金属電極,Mgに代えてZn),11:正極(カーボン電極),  20:第一非液体電解質層,21:第二非液体電解質層



亜鉛ヨウ素イオン二次電池

の充放電特性

Fig.2に,亜鉛ヨウ素イオン二次電池の充放電特性を,単位重量当たりの容量表示で示した。充放電の電流密度が低い場合には,1.1~1.2V付近にIRドロップの小さな充放電曲線を示したが,電流密度が1mA付近になると,Fig.2に示されるように,充電側で0.4V前後の過電圧の増加が起こった。しかし,このような過電圧の増加はマグネシウム負極の場合に比べると小さなものであった。これは,金属表面での不動態皮膜等の電気化学的に不活性な層の形成が,マグネシウムに比べて亜鉛のほうが起こりづらいためと考えられる。

 

亜鉛ヨウ素イオン二次電池の充放電曲線には,酸化還元反応に基づく電池に特有な電圧の平坦部がみられる。これに対して,日本触媒株式会社のカーボンー亜鉛ハイブリッド二次電池の充放電曲線(リンク論文のFig.5および6)は,平坦部の無い電気二重層的な三角波状のものとなっている。

 

これは,私たちが検討を行っている積層型非液体電解型の金属ヨウ素イオン二次電池においては,第二非液体電解質21(PVA-塩化リチウム等分散)とカーボン電極11(グラファイト粉末,カーボンブラック粉末)との間で,リチウムイオンのカーボン層へのインターカレーションが起こり得る構造となっているのに対して,日本触媒株式会社のカーボンー亜鉛ハイブリッド二次電池においては,電解質がZnO飽和したKOH水溶液(6.7mmol/L)でカーボン電極が活性炭であるような電気二重層型の構造となっているためと思われる。

 

 

今回検討を行った積層型非液体電解質亜鉛ヨウ素イオン二次電池(全固体型亜鉛ヨウ素二次電池)の容量は,

単位重量当たりの容量:約80 (mAh/g)

単位体積当たりの容量:約580(mAh/cm3)

 であった。

 

カーボン電極側は同様として,

これを,リチウムイオン電池の正極として用いられている

 コバルト酸リチウムLiCoO2 の(比重2.0~2.6 g/cm3

と比較すると

理論容量(重量当たりの容量):274 (mAh /g)

(実効容量は約半分の約150 mAh /g )

理論容量(体積当たりの容量,比重2.3):630(mAh/cm3)

(実効容量:約345 mAh/cm3

となり,

体積当たりの容量では,亜鉛ヨウ素イオン二次電池が同等以上となる。

 

Fig.2 亜鉛ヨウ素イオン二次電池の充放電特性.

単位重量当たりの容量表示.

電極面積:0.824 cm2電流密度: 1.21  mA/cm2

 

 

Fig.3 亜鉛ヨウ素イオン二次電池の充放電特性.

単位体積当たりの容量表示. 

電極面積:0.824 cm2電流密度: 1.21  mA/cm2


放電電圧の違いがあるので,リチウムイオン電池のほうがエネルギー密度は高くなるが,亜鉛ヨウ素イオン二次電池は,ベースメタルのみの構成である点,液体電解質を用いていない安全性,脱水・不活性ガス条件を必要としない低製造コスト,屈曲下での動作性・安全性等の利点を有している。